タイのバスの思い出

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エアコンなしバスは暑いから窓が開いている。排気ガスが窓から容赦なく入ってくる。
ハンカチを口に当てながら乗っている乗客の横顔を思い出す。


若い時の旅を振り返る。
バンコクに友達はいるけど、
何度も来るので、
そのうち友達がつきあってくれなくなった頃、
ひとりでいろんなところに行きました。


今から考えるとちょっと危なかったんじゃない?
と思わなくもありませんが、
少し無謀に思えることをしても、
タイで危ない目に遭ったことはありません。
(小銭入れを落としたか、すられたことが
あったくらい)


でも、怖い思いをしたことはありました。
ベンツマークのついた緑のバスに乗ったときです。
このバスをタイ人は「ミニバス」と呼んでいました。


タイ人の友達には、
「あのバスには乗らない方がいいよ」と忠告されていました。
運転手さんの中には「薬」をやっている人もいると
聞いてびっくり。
半ば冗談だろうと、好奇心だけで乗ってみたら、
本当にやばかったです。


運転が荒らすぎて、急ブレーキで
車内はガタガタ揺れるし、
(そもそもバスの床が平行じゃない)
ドアも開いている(記憶が間違ってなければ、
最初からドアがついてない?)から
立っていると外に放りだされそうになります。
無事には帰れないかもしれないと本気で思いました。


目的地に着く前でしたが、
バスが停車したのを見計らって、
命がけで下車したのを覚えています。
それに懲りてあのバスだけは、
あれから一度も乗っていません。


さすがにもう走っていないだろうと思い、
最新版の『地球の歩き方』を見てみると、
ミニバスというバスは健在ですが、
色が「赤」に変わっていました。
2010年に全ての車両が刷新されたということです。


そう。
こうやって、バンコクのワイルドさは
少しづつ薄れていくのです。
そして、多分安全のためにもそれでいいのだと
思います。


実際に「タイ 緑のバス」でググって
出てきた各種記事を読んでみると、
ミニバス絡みでの事故が多数起きていたということです。
やっぱり。かなり納得。


そんなことを思い出していると、
様々な疑問が頭をよぎります・・・・
「ところであのバスの差は何だったのだろう。」
「ミニバスのベンツマークは何だったんだろう。」
当時疑問に思ってもそのまま調べようともしなかったことを、
今さら知りたくなっています。


(紀行家の)前川健一さんは疑問に思ったことをそのままにせず、
メモして、観察して、答えを探した。そしてそれが本になった。
私はただ通りすぎる旅人だったんだと思います。



(ネットやニュース記事の情報をひたすら検索する) 
結果発表。
あのバスのメルセデスマークは偽物ではなく、
本当にメルセデス製の車両でした(失礼!)。
そして、メルセデスの車両ではないバージョンのミニバスも
あったことが分かりました。
日本だとメルセデスというと高級車というイメージですが、
大昔の車両と危険な運転を掛け合わせると、
メルセデスである意味はほとんどないなと、
記憶が知っています(笑)。


再び前川健一さんの『バンコクの匂い』について。 
前川さんが本の中で「ルートも目的地もわからないバスに乗る
という遊び」をやっているエピソードが書かれています。
「これ、私も何度かやったことあるーーー」と
この一行を読んだだけでワクワクが再燃。


今どこにいるかわからないけど、
そのまま、その状態でバスに乗っているのが楽しかった。
バンコクの人の生活が垣間見えるのが楽しかった。


「エアコンバス」はその名のとおりエアコンが効いていて
涼しい。まあ快適です。
エアコンの付いていないただのバスは運賃が半額です。
「バンコッキアンの生活を垣間見たい」と思って
乗ったものの、その暑さに辟易としました。


それから度々乗る機会がありましたが、
本でも読んだ通り、本当に「客層が変わる」のです。
4バーツと8バーツの差。
実際に乗ってみて小さなショックを受けました。


この「バスの旅」は楽しかったですが、
一度渋滞にはまって、
乗りたいバスに乗れない(来るバス全て満員)
という目に遭いました。バンコクの渋滞侮るなかれ。
結局友達に車で迎えに来てもらうという
迷惑をかけたことがありました(^_^;)。


前川さんの頃(80年代後半)から相当にひどかったバンコクの渋滞。
今はBTSも地下鉄もできたから大分ましになったでしょうか・・・。
10年程前に乗ったBTSはエアコンが効きすぎて寒いくらいでした。
時間はかなり経ってしまいましたが、
今度バンコクに行けるようになったら、
バンコクのその後を見にいくという楽しみが出来ました。

その日まで私の夢想は続く・・・